Kaleido scape

Kaleido scape -万華鏡のように千変万化する空間-

この計画は、岐阜県多治見市の街中にある旗竿敷地に建つ平屋の住居の計画である。

地方都市によく見られる、用途地域が商業地域であるにも関わらず、自治体の想定する用途の活用がないまま人口減少が進み、空洞化している状況は、この多治見市においても同じで。この土地も同様に、敷地いっぱいに大きな建築を建てることも可能ではあるが、現実的な施主の要望はそれには及ばず、敷地の中に緩やかに平屋を建てることであった。

施主の要望を満たすには充分に広い敷地であることから、さまざまな形態が生まれる可能性もあったが、コロナ禍の急激な物価上昇との折り合いがつくよう、シンプルで効果的な空間構成を目指した。2間間口で奥行が9間ある家型で筒状のメインのボリュームを配置し、そこに交差するように間口が約1間で奥行が約6.5間のサブのボリュームを配置した。筒状に細長い建築がさまざまな外部との関わりを持ち、方角や開口の大きさなどで、キラキラと光や風景が入り込んでくる。まるで万華鏡のように、白い壁に光が写り込み、時間や季節によって刻々と空間を染めていく。メインのボリュームの南側にはデッキと深い庇を設け、冬は暖かく、夏には軒先にタープを吊るせるように計画した。アウトドアが好きな一家のための縁側空間は、出かけずとも野遊びができるよう、キッチンを近くに設け、容易に屋外もしくは、半屋外で食事や余暇の時間を過ごせる。また、北側には、自立壁を設けることで、小さな中庭のようなテラスを設け、直射日光の当たりにくい外部空間とした。昨今の夏の暑さが高まる中、北側の日陰のある庭は夏を楽しむには欠かせない。また、北西は畑ができるような場所として残し、子供部屋の前の広めの廊下から連続するように設えた。正面の長いアプローチは、帰宅した家族を出迎え住まいへの期待感が膨らむように、また、アプローチの西側は将来、果樹を植えるエリアとして整えた。岐阜県多治見市は、夏になると毎年のように日本一の最高気温が報じられるほどの町であることから、天井を高くし、屋根形状を三角とすることで、重力換気が有利になるような平家建てとした。道路から大きな屋根面が見えることで、町に対しても肩を下ろした形状とし、地域に優しさや温かさの広がりが始まる拠点となるよう整えた。