-n戸の住居とn人の人の関わり-
淡路市野田尾地区滞在型市民農園施設
敷地は淡路市野田尾地区で、淡路島の北側にあり、近隣の都市圏から車で1時間程度の場所にある。淡路島は過去にも、幾度となくリゾート化の波がある中、近年も東西の海沿いにたくさんのリゾートホテルや別荘が建設ラッシュになっており、過去にない規模で変化が起こっている。リゾート化の波は毎回、必ずしも長続きせず、廃墟化し寂しげな景色をつくっていることは、住民にも周知であった。
本計画は淡路市の海沿いの国道から車で5分ほど内陸に入った山間部の農村エリアで、広がった棚田の先には大阪湾が見晴らせ、突き抜けるような景色の中にある。地域の高齢化によって、休耕田となった土地を淡路市が買い取り、農地付き住居を5棟と倉庫、少し離れた場所に、地域の交流施設を設計する計画だ。農園付き住居の設計は、「新しいけれど、どこか懐かしい『ここにしかない風景』をつくる」ことをテーマとしプロポーザルにより設計者として選定さた。同じ地区に建つ交流施設の設計も地域の同意を得て、随意契約となった。「ここにしかない風景」には、「新しいけれど、どこか懐かしい」が形容詞としてつく。1つの建物ではなく、小さな建物が地区の中に複数現れ、地域の景色をつくる。どこかで見たことありそうだけど、今まで見たことない。だれもの頭の片隅にある”農村”や”いなか”のイメージを物体化させることで地域に馴染み、都市部から来た人たちによって地区には新しい刺激が入り込むが、懐かしい風景が中和し、まるで以前からある営みのように見える。
複数ある住戸の点は、遠くの町の点と繋ぎ、線となって、面となる。そんな広がりがあるdotsN。n戸の住戸だけでなく、それ以上のn人の人の関わりをうみ出し、この地域だけでなく、それ以上の人々の営みを豊かにつなげる場所となる。
地域交流施設は、農園付き住居を借りた方々と地域の方々が交流するため以外に、この地区に来た方と地域の方の交流施設として計画した。また、地元産の青パパイヤの加工場も備わっている。